ごあいさつ

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第29回日本心不全学会学術集会
会長 山本 一博

(鳥取大学医学部循環器・内分泌代謝内科)

 この度、第29回日本心不全学会学術集会を2025年10月10日(金)~12日(日)の3日間、鳥取県米子市の米子コンベンションセンターにおいて開催することとなりました。ここ鳥取県での開催は日本心不全学会としては初めてであり、本会を主催できることを大変光栄に思っております。

 心不全という病態そのものは以前より知られており、その研究の歴史も長いですが、心不全に関する知見は最近になって飛躍的に増加していると思います。それに比例して、未解決の新たな問題も見えてきています。その大きな理由のひとつは、我が国をはじめとする先進国では社会の高齢化が進み、高齢心不全患者が増加していることにあり、当然のことながら、その病態は若年や中年の心不全患者とは異なります。また、先天性心疾患に対する手術成績の向上の結果として術後の成人患者も増加しております。このような背景もあり、心不全の原因疾患となる心疾患以外に複数の併存症を有している患者が少なくなく、心臓だけを診ても十分な診療とはなりません。さらに疾患という括りだけではなく、各患者さんの社会的背景も多様で、これが治療効果にも大きな影響を与えています。たとえ心不全の基礎心疾患名が同じ患者さんであっても、その病態の理解、治療アプローチの選択はone-size-fits-allの発想では困難であり、心不全患者さんは“十人十色”と考えて接する必要があり、いわゆる個別化医療が求められます。

 病態の詳細な理解には遺伝子情報やphenomapping情報の活用など、色々な角度でのアプローチが提唱されています。治療では心保護薬の投与は必須ですが、患者さんの病態に応じて非薬物療法を加えていく必要がありますし、筋力低下や低栄養など非心臓要因に対するアプローチも求められます。さらには患者さんの人生観、社会背景などに応じた対応も求められます。近年は循環器領域と言えどさらに専門化・細分化が進んでいますが、このような個別化医療を実現するには領域の垣根、職種の垣根を超えた連携が必須となります。かつての学術集会では参加者のほとんどが医師でしたが、近年の本学会学術集会には、医師、メディカルスタッフなど多職種の方々が参加してくださり、活発に議論をしておられ、まさに連携を具現化するために格好の場になっていると思います。

 学術集会は、これまでも、そしてこれからも毎年開催されていきますが、第29回の学術集会が過去と未来をつなぎ、参加いただく皆様にとって実り多い場となるよう準備に努めてまいります。現在のSARS-CoV-2感染症の再拡大の推移を見守る必要はありますが、今のところ現地開催による集合形式での学術集会とする予定であり、ハイブリッド開催は想定しておりませんので、多くの方々が米子までお越しいただきますことを願っております。